水を飲め!(昔話)

私は小さい頃、
悪いことをしては父によく叱られていた。

父はとにかく怖かった。

叱られると、
私は毎回めちゃめちゃ泣いた。

嗚咽するくらい、
しゃくりあげて泣いた。

そんな時、父がよく言った。

「目から水が出とる。水を飲め!」

確かに、
涙は水分だ。

あれだけ泣けば、
相当な量が出ている。

当時の私は必死で泣いていて、
そんな理屈を考える余裕なんてなかったけれど、
今思えば少しおかしい。

冗談だったのか、
心配だったのか。

あの頃はわからなかった。

でも今なら思う。

あれは父なりの、
不器用な優しさだったのかもしれない。

怖かったけれど、
思い出すと少し笑ってしまう。

遠い昔の、父の言葉だ。